ライブ・オン・ザ・シート

2020.10.15 UNISON SQUARE GARDEN 『LIVE (on the) SEAT』を観た話をする。会場は東京ガーデンシアター。

 

・ 公演内容に関するいわゆるネタバレ的な内容は、下記縦並びの「***……」以降に書く(見ようと思ってスクロールしないと見れないようにする)。この文章を誰が読んでいるかという話ではなく、作法の話。そこで何が起きているかは、千秋楽までハコの中の秘めごとであってほしい。*1

・ ライブ行きましたブログになるのもつまらんので次回は違うこと書く。

 

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まず公演内容以外の話。春先からの諸々を反映したガイドライン下でのライブとなった。
ロックバンドを着席で観る。前後左右空席。チケット申込は一口一人まで*2=同行者がいても別席。閉演後は即帰宅。他必要なあれこれ。

これ、ある程度予想はしていたが、私の理想とする音楽体験に相当に接近できるライブ環境だった。理想というのは「ステージ上 vs 自分」の一対一の感覚へ没入すること。だから近くに他人がいないのが嬉しいし、その他人それぞれが一人でいる静かな空気も好み。音が「降ってくる」ような聴こえ方も良い。楽しみ方がストイックになった分、感動の純度が上がる。茶室で茶を飲む体験に近いのかもしれない。そしてそんな状況でも関係なく、良い音楽で体は動く。

当然スタンディングの方が優れている面もあって、例えばステージと自分の熱量がぶつかり溶け合うような感覚はこちらが一歩勝る。ただ、音楽体験のあり方として着席(それも、かならずしも「着席っぽい」演目でなくてよい)はもっと増えていい。

 

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あとは一種のロールプレイとして、ガッチリしたガイドラインに則ることを面白がったところもある。別に私は強固な"衛生"論者ではなくて、明日は明日で高校時代の仲間内で中野のクソ狭い店で飲むのだけど。今回に関しては、この状況下で回るツアーを応援する態度の表明として、そうするのが一番楽しいと思った。心が死なないためにどうするかが判断基準になってきている。

おお真面目にライブから直で帰ったため、こうして当日に文章に起こすこともできる。既に過去3回の平均文字数くらいになっているが、以下で内容に触れていく。

 

 

USG2020 LIVE (on the) SEAT
2020.10.15 東京ガーデンシアター 

1. クローバー
2. フルカラープログラム
3. フィクションフリーククライシス

MC

4. 誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと
5. セレナーデが止まらない
6. 世界はファンシー
7. 君はともだち

MC

8. 夏影テールライト
9. Phantom Joke
10. 徹頭徹尾夜な夜なドライブ
11. ライドオンタイム
12. harmonized finale

閉演後SE:絵の具/イズミカワソラ

 

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1. クローバー

客電が落ち、黒の舞台幕が落ちたまま斎藤さんがアカペラで歌い出す。「on the SEAT」だからこそ活きる演出。着席でいつもより高く広い天井、隣に誰もいない感覚。暗闇に自分も歌も溶け込む。2番からバンドサウンドが合流し、ゆっくりと幕が上がる。

君がここに居ないことで あなたがここに居ないことで 回ってしまう地球なら 別に要らないんだけどな

 

2. フルカラープログラム

イントロで舞台後方からバンドロゴの垂れ幕が登場。大昔まだTwitterのアカウントが動いていた頃、田淵さんが「(しないけど)ユニゾンが活動休止をして、復帰ライブをする時、一曲目はこの曲」と言っていた気がする。それは見たいが活動休止は喜べない、というかバンドの性格上しないでしょう……と当時から思っていたが、ここで「たなぼた」の伏線回収。

1万年前から置き去りにした願いが 今、東京ジャングルの空の下 もう一度

 

7. 君はともだち

オレンジ色の照明。アウトロのハミング(サビのメロディー)に合わせて、私は私で大好きな2サビの歌詞を口ずさむ。次第になぜかハミングに合流していく。夕暮れ時に景色や他人や自分の輪郭がぼやけていくのに似ていた。

気まぐれや同情と思わないでね 君の様に僕もおんなじだからさ 世界が嫌いでちょっと好き

 

8. 夏影テールライト

新譜『Patrick Vegee』より。Bメロが何だか知らんが泣ける。
3ピースの人力だけで華やかなポップスをやっているのが良い。サビのコーラスが肝の曲。レコーディングでも「(力の入った曲なので)失敗しないよう、綱渡りの気持ちだった」というコメントがあったが、生演奏でもまだそういう空気を感じて少し面白い。原曲よりも少しタイトな雰囲気。アルバムツアーの時にどう仕上がっているかが楽しみ。


11. ライドオンタイム

無敵モード。ビート感と歌詞の乗り方がほんとうに好きな曲。音楽で体が動くってこういうことだろ(「惑星たちはダンサブル!」)。ロックバンドが着席で会場の空気を揺らせることがここで完全に証明された。2サビ後半、ベース弾いている人と一対一の感覚になる。サビを開放弦にしたのは英断だ(ライブで好き放題できるので)。アウトロのアカペラ終わりで3人のスポットライトだけが残り、次曲の同期音源が流れる。

ライドオンタイム! ほら、世界は絶対に どうしようもないはずの僕と君を スタートラインで待っている!

 

12. harmonized finale

本公演ラストの曲。意図はいったんおいて楽曲的な話をすると、バラード曲の比率が普段より高いこの演目の中に置かれたこと(+リリース当時からのバンドアンサンブルの進化)で改めてどういう曲なのか解釈できた。『クローバー』『君はともだち』は楽曲の持つエネルギーが横方向に緩やかに広がる一方で、この曲は縦にバーンと立ちあがる。「光に包まれる街」のように。

スポットライト下でラストの弾き語りを斎藤さんが終えて舞台が明るくなると、他二人は消えている。斎藤さんも袖へ。舞台後方のバンドロゴの上には「SEE YOU NEXT LIVE!」の文字。

 

閉演後

規制退場アナウンスのため、いかにもサラリーマン然とした係員が登壇。と、同時にSEで「絵の具」(イズミカワソラ)が流れ出す。舞台上にはセッティングされた楽器。いつもの開演前の風景。

ここからまた始まっていく 今日が今日で続いていきますように(harmonized finale

あまりにも客席が神妙な空気になってしまった。一方で進む退場案内。卒業式とか部活の大会とかの景色を思い出した。大きな感情を受け止められない人たちと、それはそれとして淡々と進む世界。

 

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総体で振り返ると『CIDER ROAD』ツアーっぽい空気のある公演だったようにも思う。曲目で言っても同アルバムから2曲、同ツアー以来のスタメンの「ライドオンタイム」、「夏影テールライト」の人力J-POP感も近い匂い。『CIDER ROAD』は良いけど構成上長い曲も多くて、それが着席形態と馴染んだというのもあるかもしれない。

何より「ロックバンドは指定席でも体感できる」ことを証明した2013年のツアーと、「ロックバンドは座っても観られる」を掲げた点で今回のツアーを重ねて観てしまう。押し合いへし合いする必要なんてないし、もっと言えば「腕は上がんなくちゃ!なわけがない」。ステージと自分しかいない空間があればいいし、それは今日、あった。

 

書きすぎ。

ではまた。

*1:閉演後、早速披露された楽曲の歌詞をTwitterへ投稿している人がいてぞっとした

*2:少なくともファンクラブ先行の話。他は見てないのでわからない。