:||(6人の男女について)

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を見た。諸々と楽しくない厄介ごとが立て込んで不本意ながら観てから間が空いたが、だいたい鑑賞直後に書き留めておいた雑感があるので清書しておく。言わずもがな、ふんだんにネタバレを含む

 

 

 

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式波・アスカ・ラングレー。「私が何で怒ってるか考えろ」発言、初出(Qのとき?)はシンジくんの困惑を助長する脚本的な必要性が感じられたので特に気に留めていなかったのだけど、今回の出撃間際に蒸し返してきたので笑ってしまった。厄介女じゃん!(厄介女なんだよな)

でも何より一番ショックなのは俺がこの式波クイズに正答できなかったことで。「自分一人がエヴァの呪縛に囚われていく孤独。シンジが一緒にいてくれれば……」みたいな話だと思っていた。マジで。式波・アスカ・ラングレーの、人生への「覚悟」を見誤っていました。彼女はエヴァに乗る中で起きるどんなことも受け入れる覚悟だった、あるいはそうでなくとも、「バカシンジが選んだことなら」どんなことでも受け入れたいと思うことができた。それなのに。

シンジくんの解答タイム中も「こいつ……w 」ってクスクスしてたんだけど、まさかの正解認定が入って自分の誤解に気がついた時には新宿tohoスクリーン5で自害するところだったよ。

 

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アヤナミレイ(仮称)。農業パート最高。純粋な萌え〜〜の気持ちが瑞々しくよみがえった。一方で、本当に業の深い概念だよな。だって(Qの碇シンジくんみたいなこと言うけど)あれって「綾波」じゃないんだよ。アヤナミレイに萌え〜することで綾波レイへの気持ちがぼやけていくの、怖すぎる。そんな葛藤のATフィールドを貫通する圧倒的な「萌力」(もえぢから)を持つ概念。赤子的な可愛さでもあるんだろうな、と思った。

アヤナミレイが赤子をみて「人間だ。どうして人間を小さくしたの?」って聞くくだりがめちゃくちゃに好き。脚本が想像力に溢れている。

 

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真希波・マリ・イラストリアス。マジで何でお前が正妻勝ち取ったのか、俺には全くわからないよ。わからないことが大事なんだと思ってる。綾波レイと式波アスカは結局のところ父親の息がかかった女だったわけじゃん。もちろん、それを超えたところでこの二人が碇君/バカシンジに惹かれていくところがエヴァの魅力ではある。VTuberのピエ郎さんが「『エヴァという作品』のヒロインは綾波レイで揺るがない」と評しているのも、この意味で俺は強く納得している。

でもそうじゃない、「碇シンジ」の選択であることに意味がある。父親からすると「わからんわ〜」って女性とくっつくという行為、最も平和な『父親殺し』のあり方なんじゃないか? 普通にうまいことやれそうジャン、という納得感もあるしね。

 

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碇ゲンドウ。殺された父親。言うまでもなく庵野秀明監督が投影されている。それを示唆する演出で、「プロジェクトエヴァンゲリオン」(TVエヴァの企画書)が碇ゲンドウの作った計画書として回想に出てくるのには震えた。

「お前がもっとちゃんと喋れや!」ということを散々視聴者に突っ込まれてきたわけだけど、「困ったら黙る」っていうのは内向的な少年の行動回路だったんだ、というのはすごく腑に落ちたな。それを大人がやるとこんなヤバい人間に見えてしまうのか、という戦慄とともに。シンジ君はそうならないでよかったね、って話でもあると思うけど、一方で俺はそうやって自分を守っちゃダメなのかな、ともまだ思っているよ。優しさも痛みも感じない季節はそっと隠れていよう Please, Mr.LOSTMAN

 

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葛城ミサト。シンの前に序・破・Qを見返して一番株の上がったキャラクター。初めてエヴァを見た時(19歳くらい)から年齢や立場が近づいて、やっていることの解像度が上がったんだな。この切迫した状況でこの意思決定はできんわ、と素直に尊敬するし、泥酔してもこう(獺祭の一升瓶を掴んだまま寝る)はならんやろ、と率直に軽蔑もする。魅力的な人間だなと思ったよ。

ミサトさんにも実子ができて、シンジくんの母親、という立ち位置も弱まった。それでもこの二人の信頼関係は(はたからみたら狂気的なまでに)揺るがない、というクライマックスの甲板のくだりが大好きだ。アスカの求めてきた母性がケンケンに見出されるくだりもそうだけど、擬似家族的な、いやそれすらも超えて、家族という言葉に縛られない人間関係にヒトが支えられて生きていく姿は救いがあるなと思った。

梶との間に子供ができて14歳になっているくだりはさすがに脳内で2chまとめサイトが立ち上がって「ニアサー前後でセックスすな!」で溢れた。「ニアサー」もインターネットの人が好きそう。25~29歳を呼称するおもしろユーモアワードとして流行ったら地獄だな、と鑑賞中に思った。雑念

 

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碇シンジ

「かわいいよ」←最高

「行こう!!!(デカ声)(まっすぐな瞳)」←行かないで……「そっち側」に……。

 

でもおめでとう。

 

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書いていて気づいたけど、私、エヴァンゲリオンめちゃくちゃに好きだな。

ではまた。